同窓会主催講演会

    

      「ゴータマ・シッダールタの人生哲学」

 

                  長崎大学名誉教授  篠原駿一郎     

 

  

  哲学と宗教

         

      哲学(科学も含む) 真理の追及

      宗教          安らぎを求める

       超越者(神)の存在と個人(魂)の不死

           キリスト教、イスラム教など

 

   仏教は哲学か宗教か

 

   原始仏教  (初期仏教) BC5世紀の釈迦と直弟子

   南伝仏教 上座部仏教など

   北伝仏教  (大乗仏教) 紀元前後

        チベット、中国、朝鮮、日本仏教(AD6世紀)

 

  原始仏教の人生哲学(世界観、人間観、実践論)

 

   「三法印」

 

  1.諸行無常(世界観)

     存在とは物質・感覚・識別・意志・意識の五蘊すべて

      経験できる物事だけが確かである、縁起

      無神論、反形而上学、無記

      あらゆる現象は無常である

       すべての現象は時間的空間的な関係性にある

 

  2.諸法無我(人間観)

     常住主宰の我はない、五蘊仮和合

      ルドルフ·シェーンハイマーの動的状態、福岡伸一の動的平行

 

    ジャイアンツ引退挨拶(長嶋茂雄)

      私は、今日、引退いたしますが我が巨人軍は永久に不滅です

       Mr.ジャイアンツは不滅か

 

   * 方丈記(鴨長明)

       行く河の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、 かつ消え

               かつ結びて久しく止まりたるためしなし。この世にある人と住処と、またかくのごとし

 

  3.涅槃寂静(実践哲学)

             

              四聖諦(ししょうたい)

 

     ① 苦諦(くたい) 人生は苦(ドゥッカ)である、苦とは不満足unsatisfactoriness

         諸行無常・諸法無我だから人生は不完全、空しさになやまされる

 

        四苦八苦 およそ生きていること自体が苦である

         生: 生まれる苦しみ

         老: 老いて体力、気力など全てが衰退して自由が利かなくなる

         病: 様々な病気があり、痛みや苦しみに悩まされる

         死: 死ぬことへの恐怖、その先の不安

         愛別離苦(あいべつりく): 愛する者と別離すること

         怨憎会苦(おんぞうえく): 怨み憎んでいる者に会うこと

         求不得苦(ぐふとくく):    求める物が得られないこと

         五蘊盛苦(ごうんじょうく):五蘊(肉体と精神)が思うままにならないこと

 

    ② 集諦(じったい) 苦には原因がある

         苦(不満足)が生み出す煩悩

         根本煩悩(三毒)

         貪(とん) むさぼり求める心

         瞋(しん) 自分の心に逆らうものを怒り憎む心

         痴()  愚かな心、無明

 

    ③ 滅諦(めったい) 生への執着を滅すれば安らぎ(悟り)が得られる

         煩悩を断ち涅槃の境地に達する

 

    ④ 道諦(どうたい) 悟りを得るための実践方法がある

         解脱をする、出世間、世俗を離れることである

 

      

          戒定慧

 

       戒: 出世間を目指し観照者になる

           不殺生戒(ふせっしょうかい):生きとし生けるものへの慈悲

            人間だけが特別ではない

             死刑、屠殺、狩猟、毛皮、殺処分、戦争、人工妊娠中絶等の抑制

           不偸盗戒(ふちゅうとうかい):他者と競わない

            出世を求めない、勝ち負けを争わない

           不邪淫戒(ふじゃいんかい):性的秩序を守る

             性欲に翻弄されない

           不飲酒戒(ふおんじゅかい):心身を麻痺させる行為を慎む

             過度の飲酒、麻薬の使用など

 

       定: 静かな瞑想の時

             坐禅、孤独な時間を持つ、徒党を組まない

 

       慧: 正しい世界観と人間観を持つ

            諸行無常・諸法無我を理解する

 

      Mr.ジャイアンツの発言は悟りを得ない典型である

     世間、世俗の理想であり成功者がスーパースターとなる

 

     色は匂へどちりぬるを、我が世誰ぞ常ならむ、

     有為の奥山今日超えて、浅き夢みじ酔ひもせず